これから銀行員になる人たちに知っておいてほしいこと

2017.1.7


モノへの執着が薄くなった現代でビジネスを成功させるには、「コト」、つまり経験や共感を提供することが必要という考え方がかなり一般的になってきました。

これを今の銀行員という仕事に置き換えるとどうなるか、考えてみました。

価値観が激変する時代に、銀行員という仕事を選んだ人たちにぜひ知っておいてほしい現役銀行員の経験談です。

 

銀行員のリアルな現状

今の銀行の営業担当者の状態を一言で表すと、収益を上げることに必死。です。

ビジネスとしては最悪の状態です。

この状態は必ずどこかで無理が出てきます。実際に、急に会社に来れなくなってしまう人が出てきたり、苦情が増えたり会社全体の利益が落ちてきたりしているようです。

これに対して銀行では、

・急に辞められても影響が出ないように大量に採用しておく

・苦情窓口を強化する

・収益性の高い商品を開発する

といった方法で対処しようとしていますが、それでは根本的な解決にはならないことは経営に疎い人でも容易にわかることでしょう。
 
 

「銀行員として成すべきこと」と「会社のゴール」を認識しよう

銀行は誰に何を提供しているのか。そして自分の属している部署、役職が求められていることは何かを考えてみましょう。

銀行は、あらゆる金融サービスを提供することによって、利用者のよりよい生活をサポートするために存在しています。

自分が仮に運用担当であるならば、投資信託や保険などの運用商品を通じて、お客さまの資産形成をお手伝いし、金銭面の負担を解消することで、より充実した人生を歩んでいただくことが役目です。
 
 

現状とあるべき姿のギャップとは

さて、文脈で今の銀行員が本来成すべき役割を果たせていないということはおわかりいただいていると思いますが、それは何が原因なのでしょうか。
 
 

ニーズを無視した目標設定

これが大きな原因だと思います。
銀行の営業目標は、前期にどのぐらいできたか、他の銀行はどのぐらいやったかという銀行主体の考え方で設定されており、
「これだけの見込み客がいるのでこのぐらいのニーズがあると想定される」というプロセスを経ていません。

もちろん、会社全体としてはそのような顧客データに基づいた収益目標を設定しているのかもしれませんが、それがそれぞれの営業担当者の営業目標にまで落とし込まれているとは到底思えません。
 
 

上司による評価方法

目標が設定されている限り、当然上司もその達成率で評価せざるを得ません。

その結果、営業担当者は顧客のニーズよりも目の前の数字を積み上げることに集中するようになってしまうのです。

現場は「収益性の高い商品を売らなければ」「簡単に買ってくれそうな人を探さなければ」という表面的な営業を力づくで行い続け、なんとか収益を上げて、上司からの評価を掴み取るといった悲惨な状況です。
 
 

今後の銀行員のあるべき姿とは

最初に述べたとおり、今は共感や経験に重きを置かれる時代です。銀行も例外でなく、ここに焦点をあてないといずれ人工知能に取って代わられる存在となるでしょう。
 
 

商品のことを忘れ、顧客の感情に集中しよう

銀行の営業担当者の成すべきことは、顧客により充実した人生を歩んでいただくことです。

すなわち、その人は何を求めているのか、どういう状態になれば充実した気持ちになるのかを理解する必要があります。

どんな人生を歩んできて、これからどうしていきたいかをじっくりと聞いた後で、そのお手伝いができる商品がないかを初めて考えるのが正しい順序なのです。

ときには現状のままの方ががいいという人もいるでしょう。
むしろ、「これを買いたいんだけど」と自社の商品を求めてやってきてくれた人に、「今それを買うのは得策ではありません」という助言をすることだってあるかもしれません。これこそ、共感に重きを置いたこれからの営業のあるべき姿ではないでしょうか。

「正直この人にとって良いものだとは思えないけど、買いたいと言ってるし収益も上がるから売っておこう」ではいけないのです。
 
 

「商品を売った量」ではなく、「悩みを解消した量」で評価する

評価方法も改善する必要があるでしょう。現状のように、営業の限界に挑戦するかのような目標設定はやめるべきです。

顧客の相談に真剣に向き合い、顧客とともに出した結論が自社の商品を買わないという選択になったとしても、悩みを解消したという結果がきちんと評価される体制。

例えば、相談料という名目で顧客からの「ありがとう」を受け取る仕組みがあれば、商品を売ることにこだわった、顧客も担当者もストレスを感じてしまうような営業はなくなるのではないでしょうか。

これは一担当者ではどうにもできないことかもしれませんが…。

残念ながら、そのような動きは銀行にはまだなさそうです。
さらに残念なことに、私はその動きをおこす努力もせず退職しようとしています。「どうせ変わらないだろう」「このままどうなっていくか見ててやろう」とすら考えています。

本当に優秀で行動力と器量を持った方はこの組織を変えてやろうと努力して(組織に意図的に潰されなければ)経営側へと成り上がって行くのでしょう。
 
 
私は銀行よりも家族を愛していますので、家族のために考え、時間を割きたいと思います…。

 
 
これから銀行員になるみなさんには、銀行で働く長い長い時間と、「銀行員」として周りに認識される人生が待っています。

それは決して悪いことではありません。尊敬されますし、むしろ誇りを持つべきことです。
なので、決して組織に負けないでください。

「俺なら、私ならやれる!」という強い信念を持って、周りに流されず、あなた自身の正しさを忘れずに歩まれることを祈っています。