一人だけで釘も重機も使わず木の家を建てた人がいる。


改修中の空き家の風呂をどうしようか考えているときに、

「風呂ってどうにかして自分でつくれないのかな」

と思い調べていると、とんでもないものを見つけてしまった。

 
こちらのブログ。

『一人で建てる木組みの家』-七曜工房みかん島

基礎は、お城のように栗石を一つ一つ積み

ムク材で、1本の釘も使わず

柱や梁は、すべて仕口で組み

棟上げは、三又と滑車を使い

たった一人で、建てた木組みの家です。

 

一人?

一人って…ひとり?

二人より一人少ないひとり?(しつこい)

 
実際に読んでみると、想像以上でした。

 
ほんとに一人で建てている。

奥さまがいらっしゃいますが、手伝わせない。

 
そして、ほんとに「木」しか使わない。

接続するための金具とかも使わない。

 
そしてそして、

機械も使わない。

重たい木材をあげるときには滑車を使うという徹底ぶり。

 

相当な変わり者です。(嫌いじゃない)

今日はそのブログの中身をご紹介。

 
このブログのメインは、家を一人で建てているお父さんによる「家を建てる行程」の記事。

しかし、毎回の記事の最後にある“妻より一言”が最高なので、ここでは

一人で黙々と家を建てていくお父さんの写真

付記 ”妻より一言”

をピックアップして紹介していきます。

付記 ”妻より一言”

そもそも、これは私(妻・ひろ)のブログである。

それなのに、なぜか、夫が、「『家作り編』は、僕が担当するわ」と、申し出た。

しかし、夫は、パソコンも、文字打ちもできない。

そこで、私に手書き原稿を渡す。

 

夫は、木工・家具作りがしたくて、大三島に移住しました。
その練習に、今は、「一人で建てる木組みの家」を建てています。

 

ここは、特別に風の強いところである。

私は、「台風大丈夫?」「風で屋根飛ばへん?」
と、夫に詰め寄った。

講釈タレの夫は、

「それは、解らへん。、いろいろ調べて建ててはいるから、大丈夫だろうとは思うが。夫の建てた家で、二人で死んだら、本望やろ」

と無責任にも言い放つではないか。

 

「建前の時は、手伝うで」
「グレン (クレーン車) 貸しちゃるで」

近所の人も知人も友人も、しきりに声をかけてくれた。

それに対して

「一人でやってみたいんです」
「手助けのいる時はお願いします」

夫は、いつもいつも、そう答えていた。

 

1日で多人数でする建前とは、大違いの様子であった。

それでも、少しづつ、確実に、建前は進んでいった。

私はいつも、
蟻が、小さな体で、自分よりはるかに大きくて重そうな虫を少しずつ、少しずつ運んでいる姿を見つけては

「わあ~凄い!どこまで運ばはるんやろ」

と感動して、尊敬しているけれど・・・

ホント、蟻のように立派な、夫である。

 

妻でさえ、なかなか理解しにくい “夫” である。

 

どうも、四角四面、キッチリやの夫の美的センスの原点は、
真直ぐクッキリ、境目ハッキリ、仕上がりスッキリにつきるようである。

時間をかけて凝ったにもかかわらず、出来上がってしまうと、
目だたたぬ、地味な、仕業やセンスには、誰も気付かず、
その良さを、認めてもらえない夫なのです。

 

ひとつひとつ、丁寧に説明し相談してくれるが、
ややこしい建築資材のことなど、サッパリ分からない。

 

またしても、夫は、

「写真が撮れていない」
「しっくいを塗っているとこは?」
「養生テープを、張っているところは?」

妻が、”写真を捨ててしまった” と疑っている。

しっくい も 石灰モルタル も
白セメントモルタル も 下地セメントモルタル も
下地石こうプラスター も

全く、区別がつかず、何も解からない妻である。

夫は、なにをどう撮ってほしかったのか?

『一人で建てる木組みの家』の左官工事現場は、
ブルーシートや新聞紙で、覆われていて、
夫は、セメントやしっくいまみれの泥だらけの汗だらけで
絵になる、格好いい場面など、なかったんだけれど。

 
 
 
最後に、お父さんの文章から。
 

木造の構造的な考え方、組手や継手の刻み、造作の加工組立てなどはとても難しかった。

家具作りや小物の木工品作りで経験してはいるものの、
規模が違うと、考え方を全く変えねばならないところもある。

しかし、これを本で調べたり、人に尋ねたり、
最後は大抵自分で考えて収めることが多かったが、
この解決(果たして解決できているのかどうかは、自分だけがそう思っているのだが)
へ至る道のりがとても楽しかった。

 

一作業が終わり、次の作業へ移る時には、妻の意見を仰いだ。
二人で住む空間なので、違う視点からの意見が欲しかった。

また問題が生じた時に頼りにはならぬだろうと思いつつも、
妻の意見を聞いた。
これが意外に前進的な意見であることが多かった。

そして、今書いているこのブログは、
妻が写真を撮り、小生の汚いノートを見つつタイピングをしてくれている。

労力的には、数パーセントだが、心情的には相当な比重を持つ妻の助けであり、
半人前分ぐらいの力はあったが、『一人半で建てる』というのもおかしいので、

『一人で建てる』ということにさせてもらうことにする。

 
 
「ネットの情報によると、素人では難しいらしい」

なんてことを言っているのがバカらしくなった。

やりたいことは、調べてとことんやればいい。

 
あれこれ言われながらも、きちんと最後までやりきる男らしさ。

こだわりの中に、他人の意見も受け入れようと努力するやさしさ。

 
そして、理解できないことも多々あれども、それを支える妻。

 
かっこいい。美しい。

夫婦って素晴らしい。