古民家のDIYによる断熱はやめたほうがいいのかも


断熱に関する記事はいくつめだろう。

断熱はほんとに奥が深い。

そして難しい…。
 
 

古民家はDIY断熱に不向き

現在は、こういう意見にぶつかっております。

「古民家に断熱施工は向いていない」

そもそも日本の昔の家は、断熱材が入ることが想定されていません。

 

徒然草にこんな一節があります。

家の作りやうは、夏を旨とすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪え難き事なり

つまり、

家は夏に合わせた作り方をすべきだ。

冬は暖房や服装でどうにかなるが、夏に暑い家は耐えられないものだ。

ということです。

 

この一節の通り、日本の家屋では夏涼しく過ごせるように、屋根のひさしや縁側によって、夏の直射日光がほとんど部屋に入らないようにするなどのさまざまな工夫がされています。

また、構造が最近の住宅に比べると複雑で、古い家ならば歪んでしまっている部分もあるでしょう。

何が言いたいかというと、

古民家は断熱材を入れるのに向いていない造りなのです。

 

古民家に無理やり断熱材を入れるのは、例えるならば

自転車をより早く走らせるためにエンジンをつむようなもの。

チェーンやタイヤはそんなスピードに対応できるように作られていません。

何より、漕くことによる心地よいスピード感という自転車の良いところが台無しになってしまいます。
 
 

古民家といえばDIY断熱!

調べれば山ほど出てくる、古民家のDIYでの断熱。

古民家寒い!

断熱材入れよう!

わーい!あったかーい!

的な。

 

そうかー、古民家でも断熱材入れるだけで簡単に暖かくなるんだー

と、思ってました。

 
いや待てと。

本当にそんな簡単なことでいいのかと。

例えば、床下に断熱材を敷き詰める施工。

木材だけで仕切られていた床に断熱材が入るんだからそりゃ暖かいだろう。

寒さは足元から、と言うし。

 

でももしそれが「床下だけ」なのならあまり効果がない。

結局壁や天井からの冷気で室内が寒くなって、床が室内から冷やされるので、床は冷たいまま。

断熱は、やるなら全てやらないと効果を発揮しないのです。

 
そんな簡単なことなら昔の人も床下に何か入れるでしょ…。
 
 

古民家にDIY断熱を施すとどうなる?

まず、

“隙間なく”断熱材と防湿シートを施工する

という断熱の基本をクリアできるのか、という問題があります。

なぜ隙間なくする必要があるかというと、

断熱材の隙間から熱が逃げてしまうのは当然ですが、一番やっかいなのは防湿の隙間。

隙間から湿気がもれて、壁や柱などで結露するのです。

(断熱しているせいで通常よりも内外での温度差が激しいため、より結露しやすい)

 

先述した通り、

昔の家は断熱材と防湿シートを隙間なく施工するには構造が複雑で、歪んでしまっている部分もあったりして

プロでも完璧に施工するのは難しいらしいです。

それを素人がやるなんて到底不可能なわけでして。

もし完璧にできたとしても、防湿シートの劣化や動物による破損で湿気がもれてしまうことも十分ありえます。

 

木材での結露はいずれカビの発生や腐食を招き、家としての物理的な安全だけでなく、病原菌の温床となって健康被害を及ぼすことだってあるのです。

除湿機で防ぐという方法もありますが、ハイパワーの除湿機を常に運転させておくというのは現実的ではありません。

 

古民家では「効率」を求めない

最近の「高気密・高断熱住宅」は、確かにエネルギー消費量が少なく済むので、環境的にも経済的にもやさしく“効率的な家”と言えるでしょう。

はじめからそのように設計されているので、施工不備の心配も少ないです。

古民家をこれに近付けるのにはさすがに無理があります。

同じ土俵で考えるべきではないのではないのです。

 

古民家にはエネルギー効率を求めるのではなく、古民家に合う新たな技術を取り入れながらいかに寒さを克服していくか

ということを考えるべきなのだと思います。

熱も湿気も程よく逃しながら、が古民家に合った暮らし方なのかもしれません。

 

もしくは、家の中にテントのような後付けの高気密・高断熱“空間”をつくるというのもありかも。

 

さて、この考え方が吉と出るか凶と出るか。

まだ結論は出ませんが、古民家に無理をさせない家づくりを今後も念頭に置いて進めていきますよ!