農業にトラクターは使うべきではない!?


農業、というと、絶対と言っていいほどトラクターを使います。

より早く、より深く耕して土を「柔らかく」することが良しとされてきたからです。

 

確かにトラクターを使って耕すとあっという間にフカフカになって、いかにも作物が育ちやすそうな畑になりますし、

雑草が一掃されるので、見た目もきれいで気持ちがいいです。

ただ、それは踏んだときの感触や見た目がいいだけであって、必ずしも作物にとって良いかどうかは別問題なのです。

 

 

土づくりの基本は、団粒構造(だんりゅうこうぞう)をつくることにあります。

誰に聞いても、何を読んでもそれにたどり着きます。

出典:https://n-seikaken.co.jp/item/conditioner/conditioner.html

 

ここで早速現代農業の矛盾にぶち当たります。

団粒構造は人の手(もちろんトラクター含む)ではつくることはできません。

これも農家はみんなわかっていることですが、ほぼ全員がトラクターを使って耕耘し、種まきを始めます。

団粒構造は、土中の微生物やミミズなど微小動物によってしか作り出すことができないのです。

 

トラクターでの耕耘は、それらのすみかを荒らし、自身の重みで団粒構造を破壊する行為であると言っても過言ではありません。

実際に、トラクターを使って行う、いわゆる慣行農法の畑の土壌構造は以下のようになっています。

出典:http://shizenyasai.co.jp/natural-vegetables/

作土層の20~30㎝下に、「硬盤層」という層が存在しています。
これが、トラクターなどの重機が何度も踏み固めたことによって出来る層です。

 

ここには微生物は生息できないため、非常に硬く、根はもちろん水も通しません。
つまり、この層のせいで水はけが悪くなり、根も深く張れなくなってしまうのです。

この層を破壊するための、サブソイラーというアタッチメントも販売されていますが、単に層が破壊されて水が下に抜けやすくなるだけで、微生物のすみかが生まれるわけではないので根本解決にはなりません。

 

 

これだけ悪い情報があって、なぜ農家はトラクターを使い続けるのでしょうか?

 

いくつか理由はありますが、ひとつは土壌が団粒構造になるのを待っていられないからでしょう。

トラクターで耕せば一瞬で(見た目)フカフカですが、微小生物に任せるとなるとそうはいきません。

その最初の手間が足かせとなっているのです。

ただ、一度団粒構造になればあとはかなり楽な農業になると言われています。
トラクターで耕耘しなくなると、土中で眠っている種が表層に出てこないので年を経るごとにどんどん生えてくる雑草が減っていくのだそうです。

 

また、トラクターで耕耘をしてもそれなりに作物はできるからというのも理由としてあげられるでしょう。

トラクターで耕した単粒構造の畑でも作物ができるように、肥料や農薬が数えきれないほど開発されていますから。(野菜が高いのも、このせいかもしれません)

 

やはり最大の理由は、「それが常識だから」でしょう。

この方法でみんなやっていて、商品がそろっているから。収量もその方法での情報しかないから。

 

しかし、耕耘することが省耕耘や不耕起より生産性が高い、という研究報告は実はあまり見られないんだそうです。

 

トラクターを使わない農業で、世の中にインパクトを与えるような作物をつくることができたら農業の常識がガラッと変わってしまうかもしれないですね。

 

そうなる前に別の大きな力(JAとは言ってない)が働いてしまうかもしれないですが…。