植物工場で成功する企業が未だに出てこない理由
「大企業が植物工場に手を出してきたら農家はつぶされてしまう」
と思っていたのですが、まだしばらくはその心配はなさそうです。
ここで言う植物工場とは、施設内でLEDの光と養液によって栽培するタイプのもの。
こういうやつ。
この栽培方法には、
・土壌環境が関係ないので、どこでも栽培できる
・肥料濃度などを自動制御できるため、管理が楽
・必要な肥料が安定して供給されるので、成長のスピードが速く、質も安定する
・植え付け密度が高いので収穫量が多い
・連作による障害がない
・栽培・収穫のスケジュールが立てやすい
・作業のマニュアル化がしやすく、未経験者でも取り組みやすい
・閉鎖された空間での栽培なので病原菌や害虫の心配が少ない
という露地栽培にはない多くのメリットがあるのですが、未だに「大成功!」と言える企業が出てきていないのが現状です。
ちなみに上の写真は2014年に東芝がつくった植物工場なのですが、2016年に閉鎖されています。
なぜこれだけのメリットがあって、資金力のあった企業が取り組んでも成功できないでいるのでしょうか。
結論から言えば、「コストに見合う値段で作物が売れないから」です。
植物工場はとにかく高コスト。
設備費、LEDやポンプ等の電気代、人件費など、相当な量の作物を安定して販売しないと利益は出ません。
使われなくなった工場を利用して初期投資を抑えた東芝でさえ諦めたぐらいですから、いかに厳しい事業かがおわかりいただけるでしょう。
いくら虫が付いていない、無農薬だからといって何倍もの値段で売れるものではありません。コストをかけても野菜は野菜です。
さらに、工場で安定的にとは言いつつも、その設備のクセ(光・水が一定に当たらない、気温・湿度が一定にならないなど)に悩まされる企業も多いようです。
ノウハウを蓄積する期間にかかるコストに耐えられなくなって辞めてしまう、というケースです。
こういった理由で、農業という分野においては、低コストでそこそこの量をつくる露地栽培(一部の太陽光型水耕栽培)にまだ軍配が上がるのです。
その結果、植物工場事業といえば植物工場向け機器やシステムの販売を行う企業ばかりになってしまいました。
「失敗した経験を活かしてこれから挑戦する企業に向けて商売しよう」というわけです。
当然そのほうが儲かります。
植物工場より普通の工場の方が楽に儲けられるな、というところに行き着くのです。
大成功する植物工場が今後出てくるかどうかのポイントは、いかに運営コストを下げられるか、この一点でしょう。
コストを下げられればノウハウの蓄積も増えていくでしょうし、露地栽培による作物にも対抗しうる値段にできるはずです。
エアロポニック栽培などの新しい技術が今後も開発されて、植物工場のコスト低減がどこまで進むか。見ものです。
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