日本の商品化した住宅に失望しているという話

2023.11.20


4年前に50万円で空き家を購入して以来、「家」についてはいろいろ勉強し、考えてきました。(買う前にすべき?)

 

その中で至った現時点での結論について話したいと思います。

 

 

 

簡単に言うとタイトルの通り、日本の「家」事情に失望しつつあります。

理由はいろいろあるのですが、「古民家で暮らすためのポータルサイト クロニカ」というサイトに掲載されていたインタビュー記事にそれらが集約されていたので紹介します。

 

 

── 今後、空き家が爆発的に増えて、新築の数が減っていくと思うんですが。

 

中西 古民家はもちろん残していかないとと思いますが、宅地開発はもう規制すべきだと思いますね。数十年経って廃墟になるようなものはもう不要です。

 

── そうですね。うちの実家もニュータウンの近くなんですけど、確実に廃墟化が進んでますね。もう同級生の誰も実家のマンションに住んでないですし。

 

中西 誰もが家を持てるようになったというのは良い面もあり悪い面もあります。

昔は家なんて誰もが持てるもんじゃなくて、代々住み継ぐものでしたから。それを無理に開発して、売って。前もそれで天災の事故がありましたけど、あれは人災ですよ。

 

輪和建設株式会社

 

 

 

日本人は自然と闘わないんですよ。庭でも、家づくりでも、自然を打ち負かすというのではなく、自然と仲良く生きていく、という発想です。

 

どうしたかというと、圧倒的な地震力に対し、ごまかす、という方法を選んだんです。それがいわゆる「免震」という手法です。

(中略)

ご先祖様が選んだ工法は、大きな揺れが来ると、重い瓦で浮き上がりを押さえ、揺れが大きくなると瓦を落として荷重を減らし、柱や貫が曲がったり土壁が崩れることで地震力を吸収し(制震)、足元を動かすことで地震力を無かったことにする(免震)という性質を持っています。

だから、免震+制震の構造になっている古民家に「耐震診断」をかけると0点になるんですね。でもこの事実は案外誰も知りません。

工務店さんでも知らない可能性は充分にあります。耐震診断で0点になった、だから危ない、建て替えないといけない、だからコンクリート基礎を作って筋交いを入れまくって耐震補強、という流れが、現在の「古民家再生」の主流です。

 

(中略)

 

── 今の家は、金物が折れるような地震が来たら怖いって聞いたことあります。

 

坂井 筋交いや合板でガチガチに固めた家は、一定レベル以上の力がかかったら、一気にバタンといっちゃう。けど古民家の場合は、しなるというか、ねじれながら傾くから、バタンとはいかんのですよ。

 

── それで生存空間が生まれるんですよね。

 

坂井 そう。だから僕らの再生っていうのは、古民家のそういう基本的な良い部分を残して、在来の良い部分を入れていくんです。 

 

古民家は地震に弱い? だから耐震診断して耐震補強すればいいの? というお話。

 

 

田島 昔からの結(ゆい)だとか普請だとか、住宅というのは文化・伝統であって、地域扶助で建てられていたというのが元々の住宅のかたちですよね。

ところが戦後は住宅が日本だけ「産業」になっちゃって、産業になると、セールスになる。

 

── ですよね。

 

田島 「建てる」じゃなくて「売る」になっちゃった。

 

── そうなんですよねえ。

 

田島 家はクルマの延長の高級品っていうポジションですよね。でもそういうことを鑑みると、元々売るもんじゃないものを一生懸命売ってるんですよ。

 

スタジオ・ボーダー

 

 

石井(良) うーん、古民家を直すと高い、というのはあるから、安い方に行く。という人が多いですかね。

 

── あー、やっぱそうなんですね。

 

石井(良) 大事にしてない、という印象がありますね。簡単に空き家にしちゃったり。でも、我々の年代からちょっと上になると、先祖から受け継いだ家だから、という意識のある方も多いですけど。

 

── みんな結構どこでもそうですよね。うちの集落の人たちも古民家嫌いなんですよ。とにかく古民家を潰して早く白くてキラキラした箱に住みたがってる。 よくあるのが、建売の住宅を買うのと、うちで建てるのと、たとえば200万円くらい差があったとしたら、うちで建てれば2代3代住めますよ、建売は自分の世代だけで終わってしまいますよ、と説明しても、安い方を選ばれます。

 

大五郎建設有限会社

 

 

水嶋 住宅でも、気密の数値が法的に決まってるので、ビニールやウレタンで密封するしかないんですよ。それを機械的に換気して、その中で生きていくっていうのは、家というより「検査室」みたいな感じですね。

 

── そうですね。

 

水嶋 どこの国でもそうですけど、皆さん寒い夜に布団かぶって寝るじゃないですか。でも布団って気密性ないですよね。でもあったかいし、誰もそこには不満を持ってない。けれどなぜか家になると、気密性を求めるんです。

 

── 確かに。

 

水嶋 だったらビニール着て、ポンプで換気しながら寝ればいいのにって(笑)。

 

(中略)

 

水嶋 木造ってね、大工さんがつくった建物って、ほんとにどうにでもなるんですよ。

 

──そうですよね。でも僕たち一般人はそういうことを知りませんよ。僕もずっと不安で不安で、イメージはあるんですけど、ほんとにその通りになるのか全然自信を持てなくて。

 

水嶋 腐った柱も金輪接ぎすればいいんですから。築100年なんてまだまだですよ。松材ならまだヤニが出てますよ。

 

── そうなんです。だから家の寿命って何なのかって、前にブログにも書いたんですけど。

 

水嶋 例えば近所に傾いてる家があって、虫も食ってて、雨漏りもしてる、でもそういう家って、それからも結構ずっと立ってますよね(笑)。

 

── 確かに(笑)。

水嶋建設株式会社

 

 

私が何が言いたいのかなんとなくわかっていただけたでしょうか。

 

簡単に言うと、

 

日本人は家のことを知らなさすぎる。それなのにやたらと家を欲しがる。(貧乏なくせに)

 

知識がないから業者が得する家(商品としての家)ばかり建ってしまう。

 

昔ながらの家を「潰れない、気密性が保たれた箱かどうか」という点でしか評価しないので、ないがしろにする。(維持や再生のための技術を持つ業者が生まれない)

 

結果、「街並みを無視した、潰れない、気密性が保たれためちゃくちゃ高い箱」だらけの国になる。

 

そして国はそれを規制しない。

 

ということです。

家が儲けるのための道具になっている国って、嫌ですよね。自分がそこに加担しないとしても、そういう文化の国に住んでいるということには変わりありませんから。

外国の人に誇れる街並みがいつまで残ってくれるでしょうか。

 

じゃあ自分に何かできるかというと、できることはほとんどないでしょう。唯一できることと言えば、自分がどんな家に住み、どう扱っていくのかを考え、発信することだけです。