農業を盛り上げるには、まず生産者の「売り方」の教育が必要だ


ブチファームを通じて地元の産直市場へ出品していると、「え?これをこんな値段で売っちゃうの!?」と思うことがしばしばある。

 

その多くが、老後の趣味として畑をやっている人が出している野菜だ。

採算度外視、というやつだ。

 

これが産直市場の良さでしょ、という声があるのもわからなくはないが、これは農業にとってはあまり良いことだとは言えない。

しかしその生産者には悪気はないし、消費者にとっては「野菜を安く提供してくれる人たち」ということになるので批判の対象にはなりにくい。

これがやっかいだ。

 

 

農家の多くは値段の付け方を間違っている

基本的に物の値段というのは、それを生業として行っている人が継続して再生産できるような金額(以上)に設定するべきだ。

これより極端に低くする人が出てくると、他の者がそれで利益を上げることが難しくなり、その業界は廃れていく。

 

農業の場合、それが産直市場で起こりやすい。

そのひとつの例が、先ほどあげた、年金で暮らしている老人が趣味で野菜をつくって出品するというパターンだ。

 

もちろんそれ以外にもパターンはある。

たとえば「自分にとって適切な販売価格をわかっていない」というパターン。

スーパーに並んでいる商品や、それこそ老人の出している作物に引っ張られて、なんとなく価格を付けてしまっている人。

こういう人たちも、知らず知らずのうちに農業を廃れさせている可能性がある。

 

 

「セールス」を知らない農家たち

そもそも農家というのは昔から「職人」であって、「セールスマン」ではない。

セールスの部分はすべて農協頼りだった。

しかし今は独自でセールスを確立するためのツールが昔と比べ物にならないぐらいに増えていて、職人であってもセールスマンとして物を売っていける時代だ。

というより、売っていかないといけない時代だ。

 

しかし、農家は未だにセールスの知識が非常に乏しい。

平均年齢が高く、新しいことを受け入れにくいというのも背景にあるだろう。

 

 

若い農家が生産者の教育を担うべき

ここで重要なのが、セールスにも頭を働かせながら農業をすることに積極的な、若い農家の存在だ。

ここがしっかりと農家のための、これからの農業のためのセールスを再構築して、他のセールスに疎い農家に教育していかないといけない。

 

「若い農家が教育なんておこがましい…」

 

そんなことを言っている場合ではない。

今の高齢農家に任せていては、確実に日本の農業は安売り競争になって終わる。

安売り競争に巻き込まれず、「今の日本で採れる野菜はこの値段なのだ」と消費者に提示することの重要性をいち早くわからせないといけない。

 

 

輸入野菜にどうやって勝つのか

確かに輸入野菜は安い。

「輸入コストがかかっているはずなのに、なんでこんな安いんだ!?」

と不思議に思うこともある。

しかしあれは別に不思議なことではなくて、広大な面積の畑で、巨大な機械を使って効率的に大量の作物を収穫した結果、輸入コストをプラスしても余裕で日本の作物よりも安く提供できているというだけのことだ。

 

だから、それに対抗して日本で採れる”非効率な”野菜も低価格で出品することは明らかな間違いだし、「頑張ってつくっているんだから高くても日本の野菜を買え」と言うのもおかしな話だ。

 

今の農家には、安全性なのか新鮮さなのかはわからないが、輸入野菜には出せない魅力で勝負するか、海外には真似できない作物で勝負するかしかないのだ。

それなのに、

「海外ではあんなに広い畑でやれるんだから、ずるいよな。国はもっと俺たちを助けてくれよ。」

と文句を言いながら儲からない農業を続けたり、

「もう日本では農業をやっても儲からないよ。しんどいだけ。」

と言いふらして農業のイメージをむやみに悪くしたりする古い農家の存在は、農業の未来にとってマイナスだ。

 

安全性でも新鮮さでも価格でも輸入野菜に勝てないのであれば、無理に対抗せずにきっぱり諦めて、勝てる作物で農家として勝負しなくてはいけない。農業は今そういう局面にあるのだ。

 

 

組織作りが必要

いくらこれがわかっていても、やはり個々でこれを実行することは難しいだろう。

徐々に仲間をつくっていき、これからの農業のための新しい文化を築くための準備をする必要がある。

 

農家と言えば職人気質、「まずはしっかりつくれるようになってから…」と言いがちではあるが、この準備も、ものづくりを極めるのと同等に重要なことである。