生態系をつくって勝手に実のなる畑を作る「協生農法」がおもしろそう!


「協生農法」なるものを知りました。

これがものすごーくおもしろそうなんです。

 

協生農法とは?

協生農法とは、無耕起、無施肥、無農薬、種と苗以外一切持ち込まないという制約条件の中で、

植物の特性を活かして生態系を構築・制御し、生態学的最適化状態(生態最適)の有用植物を生産する露地作物栽培法。

「2016年度版 協生農法実践マニュアル」より

 

要するに、「”植える”という作業のみで、畑の中に生態系を作り出そう」という農法です。

生態系が出来てしまえば、あとは基本的に収穫し続けるだけ。すごい。

 

 

「そんなことできるわけねぇだろ!!」と思うのも無理はありません。

 

ですが、なんとあのソニーが本気で協生農法を研究・実践しているらしいのです。

 

食べることができたり、資材として使えたりする有用植物は地球上に3万種類以上知られていますが、現在の農業は特定の作物を作ることに偏っています。

そのため、地球規模で自然環境を壊したり、生物多様性を損なうという影響が生じています。

こうした問題を解決するため、ソニーコンピュータサイエンス研究所では2010年から協生農法プロジェクトをスタートさせており、既に国内外の実証実験から様々な成果が生まれています。

 

協生農法を実際に行う前に、考えなければならないことが膨大にあります。どういう植物を植えようか、何と植え合わせようか、その後にどうやって植生遷移させていこうかという、組み合わせがものすごくたくさんあるのです。

(中略)

我々は動物の身ですから、植物がいったいどうやって育とうとしているのか、生態系がどうやってうまく物質循環させていこうとしているのかなんてすぐには分かりませんよね。

そこで環境や多様な生き物たちを様々なセンサーを通じて計測することで、生態系がいまどういう状況になっているのか、非常に解像度や集約度の高い情報を得ることができます。それを情報処理することで、人間にも分かる形にすることが可能だと考えています。

Sony Japan | AI Initiatives – 協生農法

 

 

従来の農業は、単純化するのが大好きです。

畑の状態にかかわらずチッソ・カリ・リン酸を決まった量施肥して、トラクターで耕して水はけを良くして、作りたいものだけを大量に植えて、雑草が生えてきたら除草剤をかけて、虫がついたら農薬をかけて、終わったらまた耕しての繰り返し。

つまり工場のように生産することを目指しているわけです。

 

しかし現実(自然界)はそんな単純なものではなくて、人間にはわかりえない(測定しえない)要素が無数にあって、それらの結果が畑の状態として表れているんですね。

だから、いくら膨大なお金をかけて高性能な機械や設備を導入しても、うまくいかないときはうまくいかなくて、農家はいつもヒィヒィ言わされている。

 

 

そこでソニーは、そのわかりえない無数の要素たちをどうにかして解明していこうと頑張っているみたいです。

そういうのは学問としてちゃんとあるらしい。「複雑系」というもので、ざっくり言うと「複雑な現象を複雑なまま理解しようとする学問」とのこと。おもしろい。

ちなみにソニーで協生農法を担当しているのは、東大卒の物理学者だそうです。

 

 

協生農法は農家にも実践可能か

そんな難しそうなこと、潤沢な資金のある企業にしかできないでしょ…。

 

そんなことはありません。

 

個人でも実践することは十分可能です。実際に、協生農法のアニュアルも公開されています。

 

協生農法のやり方を簡単に説明すると、「とにかくいろいろ植えてみる」ということです。

 

協生農法は、食糧生産するための生態系自体を作り上げてしまう農法。つまり、その畑の多様性を増やすことを目指します。

いろいろ植えてみて、必要なものは育ち、不適なものは育たないというサイクルを、安定するまで行えばいいのです。その結果、最終的に(人間にとっての)有用植物が多くを占める生態系が成り立てば、その後は手を加えなくても毎年収穫物がある畑の出来上がり。

出典:2016年度版 協生農法実践マニュアル

 

 

 

生産性とコストについて

協生農法のさらにすごいところは、生業として成立するレベルでの収穫量が得られることをゴールとしていること。

 

協生農法の日本における生産性は、現時点では伊勢農園において4年間(2010-2014年)に出荷された野菜類について、

一反あたりの収益/維持コスト比で慣行農法の約5倍の実績がある。

「2016年度版 協生農法実践マニュアル」より

 

協生農法はとにかくコストがかかりません。

種と苗代をはじめに大量に購入する費用以外は、ほとんど無いに等しい。(ただし最初の種苗代は慣行農法以上)

無耕起、無施肥、無農薬なので機械なんて当然いりません。だから、だれでもどこでも始められる。そして、いろんな種類の植物を植えてリスク分散されているので続けやすい。

マニュアルでは、売り上げ金額の1/10程度の投資で維持できる程度が望ましいとのことです。

 

 

具体的な栽培方法

協生農法でやることをざっくり説明すると

 

・幅1~1.5m ほどの畝をつくる(耕さなくていい)

 

       

 

・畝の中央部に、1.5m ほどの間隔で落葉性の低木果樹などを植える。

 

       

 

・つる性植物用フェンスをつくる(風除けになる)

 

       

 

・複数種類の種を混ぜて、高い密度で蒔く。(目安は、ホームセンターの小袋の種であれば4㎡に4種の種をひと袋ずつ、計4袋。)

 

 

あとは、蒔いた種たちが雑草に負けないように最初だけ注意して見てやるだけ。いずれ雑草の生える隙がないほど有用植物が生えているという状態になるという算段です。

詳しい栽培方法はマニュアルにてご確認ください。

協生農法実践マニュアル(2016年版) | Human Augmentation of Ecosystems(リンク先でダウンロードできます)

 

 

さすがにそんな簡単にはいかないとは思いますが、とにかくおもしろそうです。

 

春から実践するかも…?