日本では「土壁の家」が最も高性能である
またまた家の話です。
古民家と言えば土壁。家の造りについて何も知らない人は「昔は材料がそれしかなかったんでしょ」ぐらいにしか思わないのでしょうが、
土壁ってとーっても優秀なんです。多湿な日本では特に。
土壁を超簡単に説明すると、木舞という竹でできた下地に土を塗り重ねてつくる壁のことです。
出典:https://hihomes.co.jp/smallhouse/blog/6246/
機能としては、低気密・低断熱。つまり、空気や熱を通しやすい素材だということです。
それだけ聞くと「ダメじゃん!」と思うかもしれませんが、そんなことはないのです。
特筆すべきは、防火・調湿・蓄熱という機能。
土が燃えにくいのは説明不要ですね。
ではまず調湿から。
最近の住宅は、ビニールですっぽりと包み、断熱材を隙間なく敷き詰めることで外部の湿気と温度を完全にシャットアウトするという方法が流行りです。
しかしそれは施工が非常に難しく、さらに常に完璧でないと成り立たない方法であるためあまりに脆く、業者頼みになり本当の意味で長持ちする家とは言い難いのが実情です。
一方で土壁は、土自体が低気密かつ調湿機能を持っているので、たとえ施工が完璧でなくとも(もちろんプロがやるに越したことはないですが)、常に空気を入れ替えながら多湿のときは吸湿、低湿のときは排湿して我々にとって心地よい環境を保ってくれます。
食料などを保管する蔵が10cm以上の分厚い土壁でつくられているのも、その機能があるからこそです。
そして蓄熱性。
「古民家は"断熱性"が無いので寒い」というのが一般的なイメージで、それはある意味その通りなのですが、古民家の特性を理解していないがゆえに生まれたイメージとも言えます。
古民家では、いかに蓄熱させるかが重要になります。
最近は暖房と言えばエアコンで空気制御、という風潮がありますが、気密性の低い古民家でそれをやると当然「隙間風の入る寒い家」になります。
これを防ぐために古民家に適当な断熱施工をして「暖かくなった!」と喜んでいる人がネット上で散見されますが、はっきり言ってそれは家の寿命を縮める愚行です。まだまだもつはずの家を、今流行りの「使い捨ての家」に改築しているのですから。
古民家と相性が良いのは、輻射熱で暖めてくれる暖房。つまり、石油ストーブや薪ストーブです。
薪ストーブを夜しっかり焚いておけば朝まで暖かいというのは、土壁の「たっぷり蓄熱してゆっくり放熱する」という性質のおかげです。
蔵を改装して薪ストーブを設置したおしゃれなカフェがメディアで取り上げられることが増えてきましたが、あれは同じ流行りでもなかなか合理的な使い方だと思います。
”大きすぎる”古民家が多い中、蔵はほど良い広さなので温度を管理しやすく活用するにはちょうど良いのです。
昔は今ほど高性能な薪ストーブは無かった(高価で手が届かなかった)ため、やはり寒さに苦労することは多かったでしょうが、最近はメーカーによっては(家の一部と考えれば)比較的リーズナブルな値段になりつつあり、薪ストーブと相性の良い土壁の魅力が高まってきています。
実は我が家も一部が"もと"蔵で、蓄熱のポテンシャルは結構高いはずなので薪ストーブを焚いたらどのぐらい暖かくなるのか試してみたいと思いつつ、そんな気軽に買えるものではないと思いつつ春を迎えております。
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