「煙突がいらない薪ストーブ」は実現可能か


薪ストーブの魅力といえば、他の暖房器具には真似できない心地よいあたたかさ、火を扱う楽しさなどがありますが、欠点はなんでしょうか。

薪を準備する大変さというのがよくあげられますが、これは真の薪ストーブユーザーであれば楽しみのひとつと捉えるはずなので抜きにすると、欠点はひとつだけだと思っています。

 

それは、価格の高さです。

薪ストーブ本体の値段のことではありません。

 

煙突の施工にかかる費用の高さです。場合によっては本体以上にお金がかかります。(もはや煙突が本体…?)

多くの場合は屋根を抜いて雨漏り対策をバッチリ行う必要があるので、家と自分の体の安全のことを考えると煙突施工は素人には危険すぎる作業となります。

これのせいで、せっかく便利で魅力のある暖房器具が非常にハードルの高い存在になってしまっているのが現状です。

 

 

そこでふと考えたのです。

 

 

煙突を無くしてしまえないかと。

 

 

煙突が無いのであれば、当然煙突施工は必要ないし、面倒な煙突掃除もしなくてよい。良いことだらけです。

 

しかし最近の薪ストーブは「屋根の上まで立ち上げた二重煙突」が基本。それがなければ安全で安定した燃焼など不可能、というのが常識です。

シングル煙突にするだけでも否定されかねないのに、そもそも付けないだなんて…例えるなら脚のないこたつみたいなもの(?)です。

 

そもそもなぜ薪ストーブに二重煙突が必要なのかというと、強い上昇気流(ドラフト)を起こしてスムーズな排気を促す必要があるからです。

それがシングル煙突だと、排気が外に出る前に冷めてドラフトが弱まり、ススやタールが発生して煙突が詰まったり煙道火災が起こったりする可能性が高まるのです。

出典:http://qmaki.com/firewood-introduction/chimney/

 

ということは、ですよ。

排気の力さえ確保すれば、煙突は無くてもいいはずなんです。たぶん。

 

 

ここで、みんな大好きロケットストーブの登場です。

この図がわかりやすい。

ロケットストーブは言わば、薪ストーブの二重煙突がストーブ本体に内蔵されているような仕組みになっているので、ここで排気に必要な力を得ていればわざわざ値段も高度も高い煙突を施工する必要はないのです。

上の図で言うと、「煙突から排気」の部分でもうすぐに外に出してやるということです。横向きの短い煙突で。これなら屋根を抜く必要がないし、部材費も少なく済みます。

 

 

二重煙突のついた薪ストーブでは、ススやタールの発生を防ぐためにまだ100℃以上ある状態で排気しています。つまり、100℃未満になる前に外に出しさえすれば”煙突無し薪ストーブ”でも問題なく稼働させることができるはずです。

 

 

 

”煙突無し薪ストーブ”で発生し得る問題を上げるとするならば、暖房として十分な量を放熱しきれるかという点。

放熱するのは断熱された燃焼塔を抜けてからなので、そこから排気が100℃前後になるまで放熱させるとなると工夫が必要になりそうです。100℃になるまで横引きの煙突を伸ばす、とか。

 

また、燃焼塔を抜けた後は急激に冷やされることになる(それによりダウンドラフトを起こし強い排気力を得る)ので、おそらくススやタールが発生するでしょう。なので、”煙突無し薪ストーブ”では煙突掃除の代わりに本体の掃除が必要になるかもしれません。煙突掃除と比べれば何倍も容易な作業ですが。

 

あと重要なのは、耐久性と気密性の確保。燃焼塔内は1000℃を超える高温になるので、そこだけは鉄ではなくレンガを使いたい。しかし、レンガと鉄を組み合わせるとなると今度は気密性を保つのが難しいので、プロの技が必要。

これが実現できれば、薪ストーブ導入のハードルをかなり下げることができるのですが、どうでしょうか。

 

 

…という、初夏の妄想でした。