地域おこしの成功例をジャンル分けして比べてみた


今や、全国各地で議題に上がっている「地域おこし」「地方創生」「地域活性化」。

テレビでちょくちょく見るけども、結局どんな取り組みが成功しているのか知らなかったので、調べて分析してみました。
 
 

B級グルメ

B級グルメの成功事例と言えば、静岡県富士宮市の「富士宮やきそば」。

「やきそばでまちおこし」を標榜に取り組み、これまでに500億円以上の経済効果をもたらしています。

富士宮の家庭や飲食店で出てくる焼きそばの麺は、硬い蒸し麺、肉の変わりに肉カスを使い、鰹節ではなくいわしと青海苔の粉を振り掛けるなど、

戦後の貧しかったときに生まれた製法と味に近いものなんだそうです。

そのような、もともと地元にあった独自のもので勝負したというところが富士宮焼きそばの特徴ですね。

費用★★★★★

インパクト★★

人口増加★

もともとあったものを、宣伝の仕方だけで全国に広めたという点で、費用面は星5つ。

B級グルメ自体が陳腐化してきているので、インパクト低め。

さすがに焼きそばで人口が増えるとは思えないので、人口増加は星1つ。

 
 

地域おこし協力隊

地域おこし協力隊で知名度が高いのは、「岡山県美作市地域おこし協力隊」。

美作市上山は、かつて8,300枚もの美しい棚田があった地域でしたが、人口減少や高齢化によってそれらが失われ、 いわゆる「限界集落」と呼ばれる場所になってしまいました。

そこで、地域おこし協力隊が住民と協力しながら、2009年より棚田再生を本格的にスタートさせました。

「楽しいことは正しい。だから人が集まってくる」という理念のもとで活動しており、農道や林道での移動にセグウェイ(企業からの無償提供)を導入するなど、遊び心を忘れないのも美作市地域おこし協力隊の特徴。

現在では昔の4分の1ほどの棚田が再生されたとのことです。

費用★★★

インパクト★

人口増加★★★★★

地域おこし協力隊は、あくまでも市の職員。

一定量の税金が使われることから、ある程度自由度が制限されるため、費用とインパクトは低い。
いるだけでは税金の無駄遣いで、何をするかが非常に大切です。

その代わり、期限付きではありますが、市の職員として働けるということから移住のきっかけになるため、人口増加が星5つ。

 
 

特産品

お年寄りたちが「葉っぱ」を売って年商2億6000万円!

で有名な、徳島県上勝町。

80歳近いおばあちゃんがタブレット端末で注文・出荷状況をリアルタイムで見ながら、葉っぱを採っているらしい。

葉っぱビジネスは注目を集め、毎年多くの人が視察や見学に訪れるようになりました。ときには海外からの視察もあるほど。
インターンシップを積極的に行い、活動を通じて町に移住する若者もいるそうです。

お年寄りたちは葉っぱビジネスがやりがいになり、老人ホームの利用数が減少。
一人当たりの老人医療費も徳島市の中で最も低くなったとのことです。

費用★★★★

インパクト★★★

人口増加★★★

こちらもB級グルメと同じく、もともとあったもので勝負しているため、費用は高評価。

地域を知るには特産品、みたいな風潮もあり、もともと注目度が高いためインパクトも比較的高め。

特産品ができることによって雇用もある程度生まれることも考えて、人口増加も高め。

 
 

観光地

長崎県五島列島の小値賀島(おぢかじま)は、人口約3000名の、特に有名産業もない半農半漁の島でしたが、

島の民家に宿泊してもらい島暮らしを体験してもらう体験型観光により、

2007年度のアイランドツーリズムの総収入は6000万円、集客数6000人泊を達成しました。
翌年には総収入約1億円、8000人泊を達成。

島、という特徴を活かして、地域一丸となって成功した事例です。

費用★★

インパクト★★★★★

人口増加★★★

新たに観光要素を作るのではなく、もともとの環境を活かして観光地化させた場合の評価です。

もとを活かすとは言え、環境客を受け入れるためには費用がかかるので評価低め。

 
 

施設

三重県にある「伊賀の里 モクモク手づくりファーム」。

ここでは、地元で栽培した小麦や有機野菜をファーム内でビールやパンに加工し、訪れた観光客に販売。
いわゆる農業の6次産業化(生産・加工・販売)を、全国に先き駆けておこなったことでも知られています。

現在、ファームには年間50万人が訪れ、売上げは運営するレストランや通信販売を合わせると50億円にもなるそうです。

従業員はパート・アルバイトを含めるとグループ全体で1000人近くになり、雇用面でも大きく貢献しているとのこと。

費用★

インパクト★★★★★

人口増加★★★★

やはり施設を作るとなると、莫大な費用が掛かるため、費用面は星1つ。

他は当たればデカい。リスキーな地域おこしです。

 
 

まとめ

  B級グルメ 地域おこし協力隊 特産品 観光地 施設
費用 ★★★★★ ★★★ ★★★★ ★★
インパクト ★★ ★★★ ★★★★★ ★★★★★
人口増加 ★★★★★ ★★★ ★★★ ★★★★

 
やはり、お金を大量に投入するのはリスクが高すぎるように思います。

ここでは成功例だけを紹介しましたが、毎年大赤字を出し続けているどうしようもない施設なんてたくさんあるだろうし。

ポイントとしては

・税金をかけない(住人中心)

・ありもので工夫する

・雇用を生み出す

というところでしょう。

これらを一番満たしやすいのは、今回のジャンルで言うと「特産品」ですね。

魅力的な特産品を住人で協力して売り出すことができれば、費用対効果の高い地域おこしが実現できそうです。

 
 

番外編

島根県にある隠岐諸島のひとつ、中ノ島。ここにある町は「海士町」のみ。

ここは、「学校」を魅力化することで移住者を増やし、地域おこしに成功しているそうです。

地域の唯一の高校である島前高校は、入学者数の激減により、統廃合の危機に直面していました。

そこで、「島前高校魅力化プロジェクト」なるものを開始。

難関大学を目指す「特別進学コース」や、地域のリーダーを育てる「地域創造コース」などを新設。

さらに、島外からの“留学生”に旅費や食費を補助する「島留学」という制度を始めました。

この取り組みは評判を呼んで、入学希望者数はV字回復し、異例の学級増。

島留学には県外からの入学希望者が殺到し、今では倍率が2倍以上あるそうです。

 
もともと存在する「学校」を使い、子どもの人口を増やすとは、なんと賢い地域おこしでしょう。

これこそが、理想の地域おこしではないでしょうか。